2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で豪雨による土石流が発生し、死者22名、行方不明者5名、負傷者28名という大きな被害がでました。
土石流は、逢初川上流の標高約390m地点(海岸から約2㎞上流)で発生し、時速30㎞超で流下、被災した範囲は延長約1㎞、最大幅120mにわたります。
死者のうち65才以上の高齢者が15名で7割、なかでも70代?90代が多数を占めています。
この地域は、熱海駅に近く、「老後は伊豆山で」と語られるほど人気の地域でしたが、突然命を奪われる事態となりました。
家屋の被害も甚大で、131棟(128世帯、216名)が被災、このうち44棟が土石流で流失したと思われます。
避難した人は、発災当初560名(伊豆山地区の住民の約2割)にのぼり、1カ月後の8月3日時点でも300名が避難生活を送っています。これまで避難所といえば、学校の体育館や公民館の広間などでの「雑魚寝生活」が主流でしたが、今回はコロナ禍もあり、ホテルを避難所にするという画期的対応がとられました。住まいは人権、災害時の避難対策としてヒントになるものと思います。

土石流の大半は盛り土

土石流の量は、流出総量5万5千立方メートルで、このうち7千5百立方メートルが砂防ダムで止まりましたが、この6倍を超える4万8千立方メートルが岸谷(きたに)地区を襲ったことになります。原因となった「盛り土」の総量とほぼ一致しています。
盛り土の土地は2006年9月に小田原市の不動産・解体会社が取得し、翌年4月に同会社が「残土処理」の名目で熱海市に届け出。2009年には、盛り土15メートル、約3・6万立方メートルへの変更届を行っています。
2010年に同社が盛り土工事を実施、階段状に3段の盛り土の届け出でしたが、実際はその倍の段数と1・5倍の盛り土となっています。その後2011年に東京の持ち株会社のオーナーに売却されました。

土地改変の状況

「宅地造成」について「行政手続きは適切に行われていた」(静岡県)と発表されていますが、「産廃投棄」がこの宅地造成地近辺で行われています。
土地改変の経緯・調査・検証結果は、県・市からまだ示されてはいませんが、いずれにしても、自然災害が頻発する近年、土地の改変や安易な盛り土、産業廃棄物の不法投棄などが今回の熱海土石流のような大きな災害につながることに注視し、これまでの対策だけでなく、行政対応・監視の強化と防災対策の抜本的な見直しが必要です。

NPO住まいの改善センター理事長坂庭國晴