公的賃貸住宅の死亡リスクが低い
住宅関係3団体が夏期研修会を開く

 国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)など住宅関係3団体は7月20日、住宅と健康をテーマに台東区内で研修会を行い、オンライン含め40名が参加しました。
 はじめに研修会の趣旨を坂庭住まい連代表幹事が述べ、司法書士の加藤裕子さんがコーディネーターを務めました。
 「民間の賃貸住宅に比べ、公的な賃貸住宅に住んでいる高齢者は、9年間の死亡リスクが28%低い」、「持ち家が最も死亡リスクが低い」とする研究論文が、3月に発表されました(注)
 この論文の「読み解き、問題提起」を佐藤和宏高崎経済大学准教授が行いました。論文は「高齢になると虚弱になるため、住宅環境は高齢者に直接影響を与える可能性がある。したがって、賃貸住宅は近隣を含めた計画的な開発に考慮することも重要であろう。高齢者の生活環境に関する要因を調べることは、健康的なまちづくりを提案する上で重要である」と結論づけています。
 佐藤氏はコメントとして、①立地および住宅周辺の環境を整備することの重要性、②住宅そのものに投資することの重要性、③社会関係への介入の重要性、④個人・世帯への所得保障
の重要性、を提起しました。

「持ち家の死亡リスクが最も低い」?

 問題提起を受け、研究者のコメントを阪東美智子さん(国立保健医療科学院)、中島明子さん(和洋女子大学名誉教授)、大本圭野さん(日本住宅会議元理事長)が行いました。この中で、大本さんは「持ち家の死亡リスクが低いことの要因は何か、明らかにされていない」、「死亡リスクが低いことが望ましいと考えると、持ち家政策が推進されることが望ましいという結論が出せそうだが、それでいいのでしょうか」などを指摘しました。
(注)日本老年学的評価研究機構が、国内11市町村で65歳以上の比較的健康な高齢者4万4007人を2010年から9年間追跡調査したもの。期間中に1万638人が死亡。千葉大学予防医学センターらの研究チームが検証・分析しました。

NPO住まいの改善センター 理事長 坂庭 国晴